今日はえいえんの最初の日
月をなでるような眦
またたきの越冬
薄明かりに春のにおいを連れて
呼気に降りつもる花嵐
青褪めてざらざらの眼差し
どこにでもある夜の彩度
このつめたい色あいにつけた名前
淋しさは眠たげにまばたく
枯れおちた花片ひとつ潰さずに
幸いは降りつもる粉雪のように
私たちこんなふうに満ちたりたかった
四季/開かずの間
真秀とインプリンティング
一握の銀木犀
ただ、まぶしいものを見るとき
雨昼にほつれる息遣い
野に晒された雨と傷
壊死の手触り
青の深いところ、夜の深いところ
どうしようもなく温い暗がりにて
底なし夜の遠泳
いつしか崩れゆく箱庭のなか
ありふれた夢(断頭台にて)
物語のうらがわに記す
天辺のなにものかに向けて
綿菓子と矜恃
これはなにもかもを失ってしまう嵐
こころというもの、言葉というもの
指先のかたちの霜やけ
どこにもいないかたちを探している
日々による採光
苔むす天秤
感情に両手をくくられて生きること
目を瞑ると目は合わない
ひなた雨の庭凍
神様を濁らせる幾星霜
えいえんは満ちないからうつくしいのか
さくら色に煙るやわらかな荒野
ひなたのまぶしさに解をもとめる
ふたりのあいだに横たわる鋭利
頬に落ちるすべての雨
やさしいふりをし合う指先
うつくしくも醜くもない幻想
いつまでもあどけない凍りを帯びていて
こんなに空虚な幸いがあるか
決壊(しあわせについて)
少なくともここはまだ最果てではない
ここは奈落の花溜り
一片ずつ剥がした晦
まだ温い半貴石
おわかれの日に朝日が差すこと
火と銀に宿る化物
雨後にとけゆく残留思念
どうか触らないで、離さないで、壊さないで
あの瞳はどうしようもなくひび割れた硝子のよう
泥まみれの指先でもいいよ
逆回りのぬかるみを抜けて
絡まりたゆたう花片の下
この後の季節のことはしらない